「でんき未来教室」Vol.11


「ルナリング」−−−それは、月をひとつの太陽光発電システムに見立てたエネルギー構想。
地球の衛星である月。太陽を周回する地球。そんな星の運行システムのなかで、
永続的、且つ、持続可能なエネルギーの創出と供給を実現しようとする壮大なプロジェクトです。
それは、決して空想科学の夢物語ではなく、近い将来に実現可能な夢。
人類の活動領域が地球から宇宙へと拡がりつつある現在、地球上で培われた建築・土木技術や、
ロボット技術が新しいフロンティアを切り拓こうとしています。
今回は、そんな新時代の宇宙開発構想、清水建設の「月太陽発電・ルナリング」をご紹介します。

宇宙開発構想、清水建設の「月太陽発電・ルナリング」をご紹介します。

月と地球と太陽と共に。未来のエネルギー「ルナリング」。

「月太陽発電・ルナリング」宇宙開発のニューフロンティア。

 創業200年を超える清水建設では、1987年に宇宙開発特別プロジェクト室を設立しています。それは、同社の将来構想として始まったものであり、宇宙は、海中や地中、砂漠など、人間の活動が及ばないニューフロンティアの1つとして位置づけられています。

月太陽発電・ルナリング

 2009年に発表された「月太陽発電・ルナリング」は、壮大なエネルギープラント構想です。これは、地球上で使用する全てのエネルギーを化石燃料から太陽光に由来するクリーンエネルギーに移行することを目的として考案されたものです。ただし、ルナリングは、地球上に太陽光パネルを設置するのではありません。その名のとおり、月面上約11,000kmの月の外周(月赤道)に沿って太陽光パネルを敷き詰める壮大なシステムです。そこで発電したエネルギーをマイクロ波とレーザー光を使って、月から地球に伝送するというルナリングは、地球で人類が使用する全エネルギーを賄うために、そのリングの幅として約400kmという設計となっています。

【月発電所の施設構成】
「建築・土木技術」を、月面で応用するというゼネコン的発想

 「ルナリングは、月面を舞台としているという点が、ゼネコンである清水建設ならではの宇宙開発でもあります。
 構造物を建設するという点で言えば、地球での技術やノウハウは、月でも充分に活かすことができると考えています」。そう語るのは、同社技術研究所に所属する工学博士・金森洋史さん。

工学博士・金森洋史さん。

 宇宙空間における太陽光発電は、気象衛星や国際宇宙ステーション(ISS)のように、地球の軌道上に太陽光発電の構造物を浮かべることもできるが、制御やメンテナンスなどに労力がかかるほか、発電容量としても小規模なものにならざるを得ません。「であれば、いっそのこと月面に発電プラントを建設してはどうか、という発想がルナリングの原点でした」。
 「月には土地がある。地面があれば、そこに建造物をつくることは、例えば、地球上で大きな橋を架けたり、ビルを建設したり、あるいは、大規模な都市開発を行う際に必要とされる建築・土木技術の応用が可能だ」と金森さんは言います。
「もちろん、地球と月とでは、重力や土質など環境は大きく異なりますが、それらのデータは過去のアポロ計画などの月面探査によってある程度把握できています。そういった先人たちの成果を土台とすれば、私たちが地球上で積み重ねてきたエンジニアリング技術は宇宙開発においても役立つと考えたのです」。

「月には土地がある。地面があれば、そこに建造物をつくることは、例えば、地球上で大きな橋を架けたり、ビルを建設したり、あるいは、大規模な都市開発を行う際に必要とされる建築・土木技術の応用が可能だ」
月を巨大な太陽電池とし、地球にクリーンエネルギーを供給する仕組み。

 大気のない月での太陽光発電は気象条件による発電ロスがなく、また月の自転により、ルナリングは24時間絶え間なく発電し続けることが可能です。つまり、ルナリングとは、太陽・地球・月という惑星と衛星の正確な運行を利用し、月そのものを一つの太陽電池に見立てた巨大建造物と言うことができます。

月そのものを一つの太陽電池に見立てた巨大建造物と言うことができます。

 「よく知られているように、月は地球に対して必ず同じ面を向けています。『月の表(おもて)』とも言われていますが、発電した電気は、送電網を通じてこの面に集められ、マイクロ波とレーザー光を使って地球の隅々まで伝送される仕組みです」。
 月から送られるマイクロ波は、地球上に設置された直径約2kmの受信アンテナ設備(レクテナ)で受電し電力に変換、また、レーザー光は、雲の少ない赤道付近の洋上や砂漠に設置された受光施設で集光し、発電します。さらに余剰電力を利用して海水から水素を製造し、ガソリンに代わる燃料として使用することもできます。

月から送られるマイクロ波は、地球上に設置された直径約2kmの受信アンテナ設備(レクテナ)で受電し電力に変換
地球から月へと拡がる、宇宙への「実現可能な夢」

 ルナリングの建設に必要とされる重要な技術は資源利用とロボットです。例えば、必要な資材を地球から送るのではなく、月にある資源を極力活用することを想定しています。月の砂は酸化物なので、水素を持ち込めば「酸素」や「水」をつくることが可能です。また「セメント」ができれば水と砂・砂利を混ぜてコンクリートに。そして、太陽熱を利用し、ブロックやグラスファイバーも製造することができます。このような月面での資源採取のためのロボットや、月面での建設作業など、様々な建設用ロボットの開発の研究も進んでいます。

写真・左【月面作業ロボット】

 「これらの月面ロボットも、地球上での建設機器の応用という視点で開発しています。地球での建設作業は、陸地や海洋、山間部や砂地など様々な環境下で行われています。そこで培われた建設機器の技術やノウハウは、月面という環境でも充分に活用できると考えています」。と、未来創造技術センター/宇宙・ロボットグループに所属する工学博士・鵜山尚大さんは語ります。
工学博士・鵜山尚大さん

 今や、宇宙開発は空想科学の世界ではなく、実現可能な夢の領域になってきました。地球上の様々な現場での経験値から技術を研鑽し、また、それらの様々な技術を組み合わせる。そんな総合エンジニアリングの技術こそ、清水建設をはじめ、日本のゼネコンが誇る高度な技と言えるでしょう。
 建築・土木の領域を地球から月へと拡大する「月太陽発電・ルナリング」は、2035年の着工を目指し、現在も技術開発が進められています。

「月太陽発電・ルナリング」 清水建設株式会社
「月太陽発電 ルナリング」構想

 地球上の限りある資源を節約しながら使う・・・ というこれまでのパラダイムから、無限に近いクリーンエネルギーをつくり出し、潤沢なクリーンエネルギーを自由に使うという発想へのシフト。独創的なアイデアと宇宙技術の研究開発によって、それを具現化したのが「月太陽発電 ルナリング」構想です。
 惑星地球は太陽の賜。永続的になくなることのない、どれだけ使っても地球環境に影響を及ぼさない、太陽の膨大なエネルギーが、未来の地球を美しくし、未来の豊かな生活をもたらします。
いつまでもこの美しい地球と人類が共存していくために…。
清水建設からの新しい提案です。

取材協力

清水建設

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